Cruithne)(日本では他にクルイシン、クルイーニャ、クルーフニェ等の表記がある)は太陽系の地球近傍小惑星(アテン群)であり、地球に沿った軌道を持つ(一部に地球の自然衛星であると唱える者もいるが事実ではない)。
1986年10月10日、オーストラリアのクーナバラブラン市にあるサイディング・スプリング天文台において、ダンカン・ワルドロン (J. Duncan Waldron) がロバート・マクノート、マルコム・ハートレイ、マイケル・ホーキンスらと共に発見した。その後、1983年にチリのヨーロッパ南天天文台で発見された1983 UHと同一であることが判った。
クルースンは、イギリス諸島に最初に住み着いたケルトの部族集団クリフニャ族にちなんで命名された。クリフニャ族はヨーロッパ大陸から移り住み、イギリス諸島に現れたのは、紀元前800年から同500年にかけてである[1]。
当時のケルト人が「Cruithne」をどう発音していたのか、正確なところはわかっていない。現代のアイルランド・ゲール語での発音は、英語版ウィキペディアなどを元にカタカナで表記すると、「クリフニャ」が近い ([?krihn??]) が、英語化された発音では「クルーフニェ」([krúxnj?]) となる[1]。ただし小惑星の名称については、ポール・ウィガートのWebサイト(外部リンク参照)では「krooy-nyuh」または「KROOee-nyuh」と発音するべきだとされており、これに近い表記は「クルイーニャ」などである。日本では現在のところ、「クルースン」もしくは「クルイシン」と表記されることが多い。
クルースンと地球がそれぞれの軌道を周っている。1997年までに、カナダ・ヨーク大学のポール・ウィガートとキンモ・イナネン、フィンランド・トゥルク大学のセッポ・ミッコラによって、この小惑星が異常な軌道を持つことが割り出された。
クルースンは、実際には地球の周りを回っているわけではない。その代わり、地球の軌道の周りを螺旋状に動く。クルースンの(見かけ上)馬蹄形の軌道 (Horseshoe orbit) の両端では、それぞれ地球の反対側に接近するが、接触はしない。近日点は金星よりも太陽に近く、遠日点は火星軌道の長半径とほぼ等しい。
馬蹄形の軌道自体が回転するため、クルースンが元の馬蹄形軌道に戻るには地球年で385年かかる。このようにクルースンの軌道は地球から観測する限り非常に複雑に見え、直感にも反する。しかし、太陽を基準に取ると、理解しやすい。多少楕円形ではあるが、比較的平凡な軌道をほとんど地球年の1年で公転する。地球の重力が楕円軌道にわずかな影響を与えるため、クルースンの歳差運動が変化し、極端に軌道が地球に近づくことはなくなる。
クルースンは直径約5kmで、地球に1500万kmまで接近する。これは地球 - 月間の距離の約40倍である。クルースンの軌道は長期的には安定していないと考えられているが、ウィガートとイナネンの計算によると、長い年月にわたって地球の軌道と同期していたことが分かった。この先数百万年の間、衝突の危険がないことは確実である。
クルースンと同様に地球と共鳴軌道にある別の地球近傍小惑星は、2004年現在で3つ発見されている。(54509) YORP (2000 PH5)、(85770) 1998 UP1、2002 AA29である。
他にクルースンのような馬蹄型の軌道を持つ自然の天体として、土星の衛星であるヤヌスとエピメテウスが知られている。地球とクルースンの場合に比べれば2つの衛星の質量の違いは遥かに小さいため、2つの衛星は完全に互いの軌道を入れ替わることができる(ラグランジュ点#他の同期軌道天体、土星の衛星と環#共有軌道衛星を参照)。
火星にもこのような共鳴軌道にある小惑星 (5261) エウレカがあり、木星にはトロヤ群と呼ばれる約400個もの同種の天体が従っている。土星にもテティスに従うテレストとカリプソやディオネに従うヘレネのようなトロヤ衛星がある。しかしながら、いずれも馬蹄形の軌道はとっていない。
SF作家のスティーヴン・バクスターは、クルースンの奇妙な軌道のためか、著書「Manifold:Time(多様体:時間)」のなかでクルースンを舞台に取り上げている。
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